人生最初で最後?の往復ビンタ

私の大好きな先生、故井口基成先生に18歳のときに頂きました(笑)
先生との出会いは高校二年生のときコンクールの審査で
札幌にいらっしゃっていたとき初めてレッスンを受けました。
一張羅の服を着て、朝から心臓が止まるかと思うくらいドキドキしていたのは
今でも覚えています。
最初、まるで熊が、いや、グリズリーが立ち上がったように大きくて、怖かった…。
レッスンでは大きな声で話されるのですが、滑舌が悪く
(私が緊張しているせいなのかもしれないけれど)
何を言っているのかよくわからない!
曲の途中で、大声で何か言われたので、吃驚して演奏を止めたところ
「褒めたのに止まるやつがあるか!うわっはっはっはっは」
「…!!」
今まで曲を弾き終わってから「まぁ、いいんじゃない~」
あるいは「悪くないわよ」が褒められたと思っていた私は、
大声=叱られた と思っていたから吃驚しました。
とにかく後は覚えていないけれど、
最後に「お前は上手くなる!」
その一言がその後どんなに辛くともピアノの道を進む、強い思いになったのです。
その後、故永井進先生にレッスンしていただくこともあり、芸大進学を勧められましたが、
基成先生(ぐっちゃん)のインパクトが強く、
何があっても桐朋に行きたいという決心は変わることはありませんでした。
でも良い事ばかりではありません。
ある時、ブラームスのソナタのペダリングを直され、
その後に出てきた同じようなパターンで前と同じペダルを使ったら
「バチーン!バチーン!!」
何が起こったのかわかりませんでした。
叱られたり、怒鳴られたりせず、いきなり往復ビンタ!!
目から星が飛ぶって本当ですね。
一瞬、脳への血が止まるのではないでしょうか。
三秒間くらい記憶喪失になりました。
その後どのようなレッスンをされたのか覚えていません。
怖かったけれど、先生を嫌いにはなりませんでした。
その後のレッスンでも片道ビンタありましたが、
先生の手が出そうなタイミングがだんだんわかるようになり、椅子から立ち上がって逃げることを覚えましたよ。
「何故逃げるか!」
「だって痛いんだもの~!」(あくまで可愛く)(笑)
今考えると、若いから出来たことですね。
先生はただ、「わっはっはっは」と笑って愉快そうでした。
先生は天気予報がお好き?で、レッスン中もテレビを見ます。
天気予報の伴奏つきでピアノを弾くのはなかなかおつなものです(笑)
そのうち私も弾きながら先生と一緒にテレビを見ることができるようになりましたよ。
今考えれば信じられないですね(笑)
本当に怖い先生でしたが、人生で一番好きな先生でした。
何故好きだったんだろう?
初めて私の演奏を褒めてくれたから?
私がマゾだから?(笑)
答えは無いけれども、
ある時「ラフマニノフはな~、果物が腐る寸前の音楽なんだぞ、腐る寸前の果物は甘くて美味い、知っているか?」
私は「???!!?」
でも、この年になってやっと先生が言った意味がわかるような気がしています。
きっとこんなところが好きだったのかもしれませんね。
まだ先生にまつわるお話が色々ありますが、次回にしますね。

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